2015年5月6日
「立夏」とは、しだいに夏めいてくるころのこと。公園の木々もあおあおと繁り、さわやかな風が吹き、五月晴れの気持ちのいい季節が訪れました。
この時期は、外出すると、公園や歩道の植え込みなど、あちらこちらで目にするのがツツジの花です。いろとりどり、見る人の目を楽しませてくれます。
そのツツジ、漢字で書くと「躑躅」ですが、由来はというと・・・、「躑躅」は「てきちょく」とも読み、足ぶみするという意味があります。花々に目を奪われて足が止まってしまうほど美しい、ということなのでしょう・・・。桜に続いて、しばらくは目の保養をさせてもらえそうです。
今回の文字は、もちろん「夏」そして、さわやかに吹いている「風」を取り上げます。
「夏」 金 文
この「夏」の古代文字は、舞楽用の冠をつけ、そして両袖を振り、足を前に上げて舞う人の形です。
夏に大きいという意味があるのは、その舞楽をする人たちの顔が大きく体が大柄であったからであろうと考えられているようです。また、中国の西部の民族をいう語であったと思われます。
「夏」を季節としての「なつ」の意味に使うのは、春秋期(紀元前770年~紀元前403年)の金文に至って初めて出てきます。
作品は、「夏来にけらし」のタイトルで行った個展の作品です。
夏、厳しく照りつける太陽をイメージしたことと、中国古来の陰陽五行説に基づくと、夏には赤が配され「朱夏」といいますので、真紅の和紙で仕立てました。
「風」 甲骨文字
この作品は甲骨文字で書かれた「風」、鳥の形をしています。神聖な鳥であるので、冠飾りをつけています。
「鳳(ほう)」のもとの形と同じ文字になります。現在使われている「風」の文字では、その鳥の左や右上に「凡(はん)」を加えています。そして、天上には竜が住むと考えられるようになり、風は竜の姿をした神が起こすものであると考えられましたので、「鳳」の中の「鳥」を取り竜を含めた爬虫類の形である「虫」を加えるようになりました。
それによって、現在使われている「風」の文字が作られ、「かぜ」の意味に用いられるようになったようです。「かぜ」の意味は、空気の流れという現代の解釈ではなく、神聖な鳥の姿や竜のような姿をした霊獣よって、その意味を示しているようです。
古代では、風は鳥の形をした神、風神と考えられ、その神が各地に出かけて行き、人々に影響を与えて風俗、風物が生まれると考えられました。
日本では、稲作が渡来し、本格的な農耕が始まった弥生時代に、縄文時代の精霊信仰に加えて稲の豊穣を祈る穀霊信仰が発達し、穀霊を運ぶ鳥を崇拝する観念が広がっていったようです。発掘された土器にも鳥装のシャーマンらしき人物が描かれ、鳥形木製品も多く出土しています。また、池上曾根遺跡(大阪府和泉市)に復元された大型掘立柱建物「いずみの高殿」の屋根の上に2羽の木鳥を見ることができます。
作品は、2007年に「風の伝言」と題して自然との共棲をテーマに個展を行った際の一点です。人間よ 近頃驕ってないか??・・・と自然の代表者「風」からのメッセージを書きました。
『私は風です 鳥の形をした神が羽ばたいている姿です 人間が自然と一緒だった頃を思い出してください あの頃のように心を澄ませばきっと私の声が聴こえてくるでしょう どうか風の中に暮らしてくださるように 私の願い風の伝言です』
本格的な夏に一歩ずつ近づいていきます。連休のおつかれがでませんように。
次回は、5月21日「小満」の頃に・・・