古代文字って?▼ 第12回 大暑

2015年7月23日

 「大暑」とは、もっとも暑いころのことです。この二文字を見ているだけでも汗が出てきそうな気がします。
 梅雨も明け早朝から響きわたる蝉たちの大合唱、いよいよ夏本番、焼け付くような暑さが続きます。夏ばてせずに、この猛暑を乗り切りたいものですね。

 夏休みのプール開放に行くところでしょうか・・・ビニールのバッグを持った小学生たちが数人、ワイワイガヤガヤ楽しそうにおしゃべりしながら歩いています。また、先日は緑の茂った公園で虫捕りをしている父子を見ました。近くの広場では、もうすぐ始まる夏祭りの準備で櫓を組む作業をしています・・・
真夏の光景のひとつですね。

 夏休み早起きして近くの公園に毎日通ったラジオ体操、参加のカードにスタンプを押してくれる上級生のお姉さんが、とても大人に思えたこと。体操から帰ったら、祖母が大事に育てていた糸瓜に水遣りをして少し宿題もして、午後から学校水泳へ・・・
花火大会、六月灯、キャンプ、かき氷、絵日記・・・
故郷での夏の思い出がよみがえってきます。

 ところで、夏ばて防止に効果的な食品の代表、鰻ですが、万葉集に大伴家持の歌が詠まれています。
『石麻呂に我れ物申す 夏痩せによしといふものぞ 鰻(むなぎ)捕り喫(め)せ』
(訳)石麻呂さんに申し上げます。夏痩せに良いそうですから、鰻を捕って食べてください。

 万葉の時代にも、鰻が夏負けを防ぎ精をつける食べ物であると知られていたのですね。興味深いお話です。

 今回取り上げる文字は、この時期とても恋しくなる「氷」と、誰もが大切に抱いている「郷」です。

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「氷」 金 文

 元の字は「冰(ひょう)」です。

 右部の水の部分は、流れている水の形で小さい水の流れを表しています。
 小さい水の流れは凍りやすいので、水の横に氷のかたまりを二個つけている形とみられます。

作品は、2013年の「時」をテーマにした際の一点です。

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タイトルは「思い出」

真夏のある日、眼前に桜島がそびえる青い海で母と子が海水浴を楽しんでいる 帰りには、風物詩のミルクのたっぷりかかったフルーツ入りのかき氷を食べる約束・・・そんなストーリーの作品です。

 作品の金文で描かれた「氷」の文字では、左部が水の流れを表し、右部にある二個の点が氷のかたまりです。

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「郷」 甲骨文字

 

 「皀(きゅう)」と「卯(ぼう)」とを組み合わせた形です。
 「卯」は、人が向かい合って坐っている形です。
 「皀」は、先祖の祭りなどのときに食事を盛って供える青銅器の器、𣪘(き)のことです。祭りの後に𣪘をはさんで二人が坐っている形が「郷」で「むかう」の意味となり、饗宴の意味を表します。

 また、その饗宴に招かれる身分の者を卿(けい)・大臣などのことをいいます。卿の所有する領地を郷といい、その後その領地である意味を含めて皀の左右に邑(さと、むら)を加えた「郷」の字が作られました。「郷」と「卿」とは、古くは同じ形の字だったようです。



 作品は、2011年「ムラマツリ」をテーマに行なった個展のものです。

 文字の成り立ちそのものであるマツリの後の饗宴(直会)、また個展の会場が雅之郷(みやびのさと)ということもあり、必然的にこの「郷」の文字を選んでいました。

 雅之郷の郷長(さとおさ)さんは、玄関を入ると必ず「おかえりなさい」、また帰路につく際は「いってらっしゃい、おはようおかえり・・・」と訪れた人皆に声をかけられます。まさしく「故郷」を感じる瞬間です。

 美味しいものをたくさん置いたダイニングテーブルをはさんで、会話がはずんでいます。
朝まで語ろう・・・『たくさん たくさん はなそうよ』


次回は、8月8日「立秋」の頃に・・・
とはいえ、立秋は暦の上のこと、猛暑はまだまだ・・・ご自愛くださいませ。