古代文字って?▼ 第15回 白露

2015年9月8日

 「白露」とは、大気が冷えて草の葉に白い露を結ぶころのことです。ようやく残暑もおさまり、いよいよ本格的な秋が訪れます。天高く馬肥ゆる秋・・・種類豊富な秋の味覚が食欲をそそり、きっと肥ゆるのは馬のみならず・・・
 ここのところ、秋雨前線や台風の影響で残暑の厳しい日が少ないので、実際よりも季節が進んでいる感があります。また、続々と発生、襲来する台風の被害が危ぶまれる時期でもあります。

 台風の季節で思い出すのが、富山県婦負郡八尾町(ねいぐんやつおまち)の「おわら風の盆」です。風の神を鎮め、豊作を祈る三百年以上続いている民謡行事だそうです。
台風が多いとされる「二百十日」から三日間、十一の町内の男女が夜を徹して踊り歩きます。深編笠を目深にかぶり、男性は町内揃いの法被、女性は揃いの浴衣で、物悲しい三味線と胡弓の音色に乗せた「おわら節」が流れる中、舞う姿はとても優美で、また艶っぽく魅せられてしまいます。ちなみに女性の踊りの所作は、蛍を追っている姿、男性の所作は農作業を表現しているといわれます。

 実りを前にしての台風襲来は、稲にとっても農家にとって(私たちにとっても)大打撃です。「どうぞ 大風よ 今だけは 吹かないで 今年こそは豊作にしてください・・・」と農家の人たちの祈りの声が聞こえてくるようです。

 今回取り上げる文字は、「白」と「豊」です。

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「白」 甲骨文字

 白骨化した頭蓋骨の形です。風雨にさらされ、肉が落ちて白骨化しているので「しろ、しろい」の意味になります。
 偉大な指導者や討ち取った敵の首長の頭は、髑髏(どくろ)として保存したようです。優れた首長の頭骨には優れた霊力が宿ると信じられていたからです。

 なんとも残酷な話で現在の価値観では、まったく考えられないことですが、古代の漢字の成り立ちには、戦、犠牲(いけにえ)、呪術などに関するものが多くあります。



 以前「穀雨」で少しふれましたが、「道」の文字に含まれている「首」は、除霊のためのものです。
 道は、邪悪なものが潜んでいる非常に危険な場所なので、異族の首を刎ねて持ち、その首の呪力によって道に潜む邪悪な霊を祓いながら進んでいったからだそうです。祓い清めて進むことを「導」(みちびく)、祓い清められた所を「道」(みち)といいます。

 ご覧の通り髑髏の形です。学生の頃に理科室でしかお目にかかったことが無いものなので、揮毫していてもとても不気味でした。

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「豊」 甲骨文字

 

 元の字は「豐」、下部の「豆」は、脚の長い食器(たかつき)を表しています。
 その食器である「豆」の中に、黍稷(しょしょく)の類を盛った形です。黍稷とは、「きび」と「あわ」を指し、転じて五穀を意味します。
 黍稷は、祭りのときのお供え物とされ、脚の長い食器の中に多くの黍稷の類を盛って供える形が豐で、「おおい、ゆたか」の意味になったようです。

 作品は、2011年の個展「ムラマツリ」のものです。
縄文のムラビトたちが、豊穣に心からの感謝を表し、山の神にお酒と黍稷を捧げ、喜び歌い踊るマツリの様子を古代文字で表現した個展でした。
 「立秋」でご紹介しました「秋」と、両手で酒樽を捧げている形の「尊」、そして今回の「豊」がムラマツリの三部作になっています。

 「尊」については、いずれ取り上げたいと思います。


 次から次に発生してくる台風の行方が気がかりになりますね。
実りの秋に甚大な被害が出ませんように祈りましょう。

次回は9月23日 「秋分」の頃に・・・